性能評価方法の具備すべき要件
2018年04月19日 横山 裕(東工大教授)
性能設計や性能発注,受注など、性能に基づいた建築行為を円滑に遂行するためには、個々の性能ごとに、妥当な性能評価方法が整備されている必要があります。では、妥当な性能評価方法とは、どのような評価方法でしょうか。私共の研究グループでは、以下の3つの要件を備えている評価方法を、妥当な評価方法と位置付けています。
・使用者にとってのモノの良し悪しを定量的に評価できる
・材料,構法のいかんに関わらず一律に評価できる
・有り姿での評価ができる
性能は、あくまでも使用者にとっての良し悪しを表す数値です。フリーアクセスフロアを例にとって説明すると、例えば、パネルの強度は、床の開発者や製造者にとっては重要な数値ですが、エンドユーザーである使用者にとっては、床を取捨選択するうえでの直接的な指標とはなりません。このような数値は、物性値と言って、性能値とは明確に区別しています。どれぐらいの重さのものまで置けるのか、例えば「1000kgfのものまで置ける」などといった値が性能値となります。性能評価方法は、この性能値を測定できる方法でなければなりません。
2点目ですが、現在、フリーアクセスフロアには"溝構法"や"パネル構法"など様々な構法のものがあり、金属材料,セラミック材料,合成高分子材料,木質系材料など多種多様な材料が使われています。使用者は、これらを一律に比較し、自分の要求に合致したものを取捨選択する必要があります。したがって、例えばパネル構法にしか適用できない評価方法や、金属材料にしか適用できない評価方法では、不都合が生じることはいうまでもありません。
3点目ですが、有り姿とは、実際に床として使用される状態を指します。例えば、上述のどぐらいの重さのものまで置けるのかという性能の場合、パネルの強度が十分でも、それを支える支柱や、パネルと支柱の間に挟む緩衝材の強度が不十分だと、十分な性能は確保できません。一般に、個々の材料や部品単位での性能評価は不可能であり、それらを組み合わせて床として使用される状態のものを評価する必要があります。
以上に述べたように、3つの要件は性能評価方法の目的から考えていずれも欠くことのできない要件ですが、これらの要件を具備することはそれほど容易いことではありません。そのため、一般に、性能評価方法は、通常の物性試験方法と比較して複雑になりがちで、結果もばらつきやすく、実施するにはそれなりの技術と経験が必要となります。