きっかけ
2019年04月05日 高橋 宏樹(ものつくり大教授)
ある物事に興味を持つようになるきっかけの多くは、華々しい成果です。人々をアッと言わせるような建物や宇宙ロケットが飛び立つ映像などを見て、建築家にあこがれたり、ロケットをつくりたいと感じたりするわけです。ところが関係者であっても、華々しい成果が披露される場に立ち会える機会は案外少なく、携わっている人々の多くは一見すると地味に見える一つ一つの成果を地道に積み重ねています。したがって、興味を持って取り組み始めても、目の前の課題が華々しい成果と無関係に思えて冷めてしまうこともしばしばです。
こういうことは若いうちにはよくあって、建物にも宇宙ロケットにも絶対に外れないボルトは大事だから、ボルトを開発しよう、と考える若者は少なく、建物やロケットをつくるつもりが、実際にはボルトをつくっている、ということが多いと思います。経験を積むと、自分がつくっているボルトがなければ建物もロケットも完成しないことに誇りを持てるのですけれど("ボルト"はあくまでも例です、念のため)。
このように、物事の多くは表面に見える華々しい成果とそれを下支えする地道な成果で成り立っています。得てして地道な成果は、その先の華々しい成果に繋がることを想像しづらいものです。学校で教わる「理科」は、「地道な成果」の類いで、小学生に"理科嫌い"のきっかけとならないように伝えるのは本当に大変なことだと思います。