このコラムは、私どもフリーアクセスフロア工業会が日ごろよりご指導・ご相談に与っております多方面の学識経験者の皆様に、建築・技術一般について平明に綴っていただくのを連載するものです。
研究室の一隅から創出されたものに加え、市井の観察からの発見もご披露いただけるのものと期待しお楽しみください。
※当コラムに掲載の画像、文章につきましては、無断で複製、転載、転用、改変等の二次利用を固く禁じます。
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2019年12月30日 高橋 宏樹(ものつくり大教授)
前回の通り「想像」は大事なのですが、最近良く活用されているあるものによって、この「想像」する力が低下してしまうのではないかと思っています。それは「バーチャルリアリティ(VR)技術」です。実際には見られない、あるいは触れられないもの、ことだから想像するしかないのですが、例え擬似的にしろVR技術によって体験出来てしまうと、想像する必要がなくなってしまうのでは無いかと思うのです。
実体験できない事柄を想像することが、考える力を養うことに繋がると思っています。もちろん想像だけが考える力を養うものでは無いでしょう。また、「百聞は一見にしかず」の言葉通り、体験出来ないままでいるより体験出来た方が良いのは間違いありません。それでもVR技術を安易に多用してしまうと、中年の杞憂かも知れませんが、脳がラクをしてしまうような気がしてなりません。
VR技術は道具のひとつですから、その使い方が大事なのでしょう。例えばカーペットを選ぶとき、1枚のサンプルシートを見て、それが床に敷き詰められたところを想像することは一般の人には中々難しいと思います。しかし選んだカーペットで仕上げられた部屋をVR技術を用いて見渡すことが出来れば、ピッタリのものを選べるでしょう。危険を伴うような作業の訓練にも極めて有効だと思います。このようなときには、脳はラクをしていないはずです。脳にとっては少し大変かも知れませんが、「百聞」も大事だと思うのです。